約 3,520,818 件
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/175.html
シェオゴラス神話 ミモフォナス 著 シェオゴラスは音楽を発明する 最古の時代、世界がまだ未開だった時代に、シェオゴラスは人間に混じって歩くことを決めた。彼は杖を持った紳士に変装して、気付かれずにあちこち移動した。11昼夜の後、シェオゴラスは人間の生活が彼の超俗的な生活よりはるかに退屈であると確信した。 彼らの生活をもっと面白くするために何ができるだろうか? と彼はつぶやいた。同時に、近くにいた若い女が物憂げにつぶやいた、「鳥の奏でる音はとても美しい」 シェオゴラスは黙って彼女にうなづいた。人間は美しく、心を動かされるような鳥の鳴き声を作ることができなかった。その声は哀れで、平凡なものだった。彼は人間の本質を変えることができなかった、それは他のデイドラの王子の権限だったためである。しかし、彼は人間に美しい音を奏でる道具を与えることができた。 シェオゴラスは短気な女を捕まえて、バラバラに引き裂いた。そして、その腱でリュートを作り、その頭蓋骨と腕の骨で太鼓を作り、その骨でフルートを作った。彼はこれらの贈り物を人間に渡し、こうして音楽が生まれた。 シェオゴラスとライアンディール王 ライアンディール王は非常に合理主義的な男として有名だった。彼は小さく、簡単な造りの、芸術品など全くない、みすぼらしい宮殿に住んでいた。「これ以上は必要ない」、彼は言うのだった。「軍や重要な公共事業に使えるものを、なぜそんなぜいたく品のために私の金を使うんだ?」 彼の王国はその実用本位の規則のもとで繁栄した。しかし、人々はいつも王の実用主義的考えを理解していたわけではなかった。必ずしも実用的とは言えなくても、見た目に美しい家を建てる者もいたのだった。彼らは芸術作品に時間とエネルギーを費やした。ぜいたくな祝賀行事を催したことだろう。一般的には、彼らは全くもって幸せだった。 ライアンディール王は彼らのような多くの者が王の見本に従わず、質素で実用的な生活をしなかったことに落胆した。彼は何年もこのことについて考えた。そしてついに、そんなつまらない活動に時間を浪費しなければ、どんなに多くのことを成し遂げられるのかを人々が単に理解していないだけだと彼は確信した。おそらく、人々にはもっと見本が必要だっただけなのだと彼は判断したのだ。 王は今後新たに建てるすべての建物は簡素で、装飾もなく、住居として必要な大きさを超えないように命じた。人々はこれには不満だったが、王のことは好きだったので新しい法を尊重した。2、3年が経過すると、豪華な建物より簡素な建物のほうが多くなった。しかし人々は節約した金をさらに多くのぜいたくな芸術品の作成、購入、そしてさらに度を超えた式典に費やした。 ライアンディール王は、自分の時間と財産をもっと実用的な目的に使えばどれだけ有益か、厳しい見本をもう一度人々に示すことにした。彼は都の中のすべての芸術品を禁止した。これには人々もかなり怒ったが、王が人々のためを思ってやっていることだと理解した。しかし、人間の本性はそんなに簡単には否定できない。さらに2、3年が経過すると、都は簡素で、簡単な造りで、芸術のかけらもない建物ばかりになった。しかし、今や人々はさらに多くの金と時間をパーティや式典に費やしていた。 心を痛めたライアンディール王は、人々は子供のように扱わないといけないのだと考えた。そして子供のように、人々には生活に本当に重要なものは何かを理解させるため権威ある偉人の定めた規則と罰が必要だった。彼は都にお祭り騒ぎは必要ないと考えた。歌、踊り、音楽はすべて禁止された。食べ物や飲み物でさえ、水と簡単な食料品に限定された。 人々はもうたくさんだったが、ライアンディール王には非常によく訓練され、整備された軍隊があったために、逆らうことはできなかった。人々は大挙して聖堂や神殿を訪れ、ライアンディール王がこれらの新らしい圧政的な法を取り消してくれるよう、すべての神、デイドラの王子にさえ祈った。 シェオゴラスは人々の願いを耳にして、ライアンディール王のもとを訪れることにした。彼は花びらの代わりの腕と中心にあるマッドゴッドの顔で花畑のように夢の中にいる王の前に現れた。「私は創造者の君主であり、乱れし者の君主である。おまえには私の創造した贈り物は無用なので、豊富にある他の贈り物で祝福することにした」 その翌日から、都で生まれた子供は皆狂気に襲われた。幼児の心の病は露呈しなかったため、気が付くまでに数年かかった。王自身の息子も犠牲者の1人で、発作や妄想に苦しんだ。しかし、ライアンディール王は方針を変えることを拒んだ。 彼の息子グリントが12歳だった時、寝ているライアンディールを刺した。死に際にライアンディールは尋ねた、「なぜだ?」、息子は答えた、「これが僕にできる一番実用的なことだ」 新しい若い王は王宮にいる召使いを全員殺すように命じた。彼は新しい治世とライアンディールの法の撤廃を祝って盛大な式典をするように命じた。集まった人々に出したシチューは王宮の召使いの死体から作ったものだった。彼はすべての建物の東面の壁を赤く塗り、西面の壁を縞模様に塗るように命じた。彼はすべての市民は豪華な仮面を頭の後ろにつけるように命じた。それから王宮を焼き払い、新しい王宮の建設を始めた。 新しい王宮では、若い王は自分の部屋に扉をつけないように命じた; 小さな森林生物が襲ってくることを恐れたためだ。彼は太陽や月がねたんで彼の死を企てることを恐れて、王宮に窓をつけないようにも命じた。 こうして、ライアンディール王の政策は終わりを告げた。都の人々は豪華な芸術品と騒々しい式典のある生活へと戻った。彼らはまるで自分たちには生き生きとした王がいて、王宮を維持しているかのように話して振舞い、王宮を家のように使い、狂った子供の世話をした。シェオゴラスはこの結果に非常に喜んだ。その翌日から、都はあり得ないほどの数の優れた芸術家と乱れた市民という祝福を受けた。 精神力の争い 以前、ラバトという名の強力な魔導師が、時の風を歩いてシェオゴラス閣下を見つけた。彼の目的はこの最も移り気なデイドラの王子に気に入られることだった。シェオゴラスを見つけると、ラバトは謙虚に話しかけた、「シェオゴラス閣下、お願いがございます。私にその偉大な魔力をお与えいただければ、あなた様の名のもとに喜んで1000人を発狂させましょう」 ラバトにとって幸運なことに、シェオゴラスはご機嫌だった。彼は勝負をもちかけた、「もしおまえが3日間正気でいられたら、願いをかなえてやろう。その間、おまえを発狂させることに全力を注ごう。楽しいことになりそうだ」 ラバトはこの新しい取引にあまり気が向かないと確信していた。彼は本当に1000人を発狂させることを楽しみにしていたのだが。「シェオゴラス閣下、私の浅はかで自分勝手な要求であなた様の邪魔をしたことを後悔しております。私は不運な願いを撤回し、畏れながらこの場を去ります」 シェオゴラスは笑っただけだった、「遅すぎる、強力なラバトよ。勝負は始まっている、おまえは続けなければならない」。ラバトは逃げたが、すぐにデイドラの領域からのすべての出口が閉ざされたことに気付いた。彼は後ろを何度も振り返り、あらゆる音に驚きながらあてもなくさまよった。シェオゴラスが仕掛けてくるのを待っていると、次々と新しい恐怖が襲ってきた。 3日後、ラバトはあらゆる植物や動物はシェオゴラスの道具なのだと確信した。シェオゴラスが食べ物や飲み物に毒を入れるのを恐れて、食べることも飲むこともしなかった。シェオゴラスが夢の中に侵入してくるのを恐れて眠らなかった。(それは愚かだった、夢はヴァーミルナの領域なので、私たちに安らかな眠りを与えてくれるであろうから) その時、シェオゴラスが彼の前に現れた。ラバトは叫んだ、「あたな様は世界中が私を監視するようにされました!あらゆる生物や植物は私を発狂させようというあなた様の命令で動いています」 シェオゴラスは答えた、「実際、私は何もしていない。おまえは自分の恐怖で勝手に発狂したのだ。その妄想がおまえが本当に発狂している証拠だ、だから私の勝ちだ。おまえは1000人を発狂させることを望んでいたが、私はおまえ1人の心を狂わすことを望んでいたのだ」 その翌日から、ラバトはシェオゴラスのあらゆる思い付きのために働いた。勇敢な旅人がシェオゴラスに近づこうとすると、いつでもラバトは警告する、「シェオゴラス閣下はすでに我々の中にいる。おまえはすでに失われているのだ」 SI デイドラの神像関連 神話・宗教 緑3
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/215.html
錬金術師の詩歌 ドゥーマー太古の物語 第5部 マロバー・サル 著 マラネオ国王おかかえの錬金術師が持ち場を去った 研究所での実験中に爆発事故を起こしたからだ 国王のおふれが回された 新しい術師を募集する 薬や何かを混ぜるのだ 王が選ぶと決めたのは 術と道具を使えるものだけ 愚かな術師はもうたくさん 検討、会議、話し合い 王は候補を2人に決めた イアンスィップス・ミンサークとウンファティック・ファー どちらもとにかく野心でいっぱい どちらがすごいか競うのだ 王は「試験を行う」と 薬草、宝石、書物にお鍋、軽量カップを用意した 透明ドームの屋根の下、部屋に2人は通された 「飲むと姿が見えなくなる薬を作り出せ」 笑い上戸の王様はやっぱり笑ってこう言った イアンスィップス・ミンサークとウンファティック・ファー 2人は作業に取り掛かる 薬草刻んで金属溶かし、奇妙なオイルを精製し 釜に入れたら温めて用心深くあわ立たす 中身を鉢に移したら混ぜて混ぜて混ぜまくる 時々互いを盗み見て、相手の様子を確認し 45分も経ったころ、 イアンスィップス・ミンサークとウンファティック・ファー どっちも自分が勝ったと思い、相手にウィンクしてやった マラネオ国王こう言った 「それでは今から自分たちの作った薬を飲んでみろ なべからひとさじすくい取り味見をして見せてくれ」 ミンサークが薬を口にするやいなや彼の姿は消え失せた ファーも味見をしてみたが、彼の姿はそのままだった 「銀とブルーダイヤモンドと黄色の草をちゃんと混ぜたと思うのか?」 王は笑って教えてやった。「見てみろガラスの天井だ 光がお前を惑わせて使うべきだった材料の 色を変えてしまったのだ」” 「ところで何を混ぜたのかな」浮かれてうるさい声がたずねた 「レッド・ダイヤモンドと青い草、それに金ではないのかな?」 「(ドゥーマーの神の名前)の力によって」ファーは若干おびえて言った 「私は自分の知能を高める薬を作りました」 出版社の注釈: この詩は明らかにゴア・フェリムの書く文体であり、解説も特に必要ない。AA/BB/CCという単純な旋律を踏んでいて、歌のようであるが意図的におかしな律動にしてある。あきらかにおかしな名前、ウンファティック・ファーとイアンスィップス・ミンサークというジョークが繰り返し現れる。最後にきわめつけなのが、錬金術師が頭の賢くなる薬を発明してしまうところだ。あたかも偶然の発明のように装っているが、空位期間にある聴衆の反知的探求に対して訴えかける形となっている。しかし、結局はドゥーマーに却下されてしまうことになるのだが。 マロバー・サルはドゥーマーの神の名を用いることを嫌がる特徴がある。そう呼んでよいかどうか分からないところもあるが、ドゥーマー信仰は、彼らの文化の複雑で難解な一面でもある。 千年の間に、この詩歌は学術書以外からは姿を消し、ハイ・ロックでは居酒屋の歌として有名になった。ドゥーマーの人々と同じような運命である。 茶3 詩歌
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/236.html
「盗賊」 レヴェン 著 もしこのエスラフ・エロールの連続物語の第1巻、「物乞い」を読んでいないのなら、すぐさまこの本を閉じて出直していただきたい。 さて、今この本を閉じなかったお優しい読者の方、あなたにならお話ししよう。私が最後にエスラフを見た時、彼はまだ少年だった。彼は孤児で、物乞いとなり、彼の故郷であるエロルガードから遠く離れたスカイリムの冬の荒野を走り抜けていた。彼は長年、そこここで走っては止まりを繰り返し、大人になった。 食べ物を得る方法でもっともやっかいなのは人から恵んでもらうことだと、エスラフは身をもって体験していた。荒野の中で食べ物を見つける方がはるかに易しく、もしくは誰も見てない市場の棚から盗むほうが簡単だ。唯一やってはいけないことは食料を買うお金を得るために働き口を探すことだ。これは必要以上にやっかいなことになる。 エスラフにとっては、ゴミ漁りや物乞い、泥棒するほうが楽であった。 初めて盗みを犯したのはエロルガードから出た直後、ホアベルドのちょうど東に位置する村、ジェンセン山近くにある岩だらけの場所にあるタンバーカー南部の森の中であった。エスラフはひどくお腹が空いていた。4日間で口にしたのはガリガリにやせ細った生のリスだけだった。その時、肉の焼けるにおいと煙があがっているのが見えた。吟遊詩人の一団が野営をしていたのだ。エスラフは茂みの中からそっと覗き、彼らが料理をこしらえ、笑い、戯れ、歌を歌っているのが見えた。 食料を恵んでもらえるよう頼んでいたが、それまでの道中ずっと断られていた。だからエスラフは走って飛び出し、肉をつかみ取り、火にたじろいでそのまま近くにあった木によじ登ってガツガツと食べ始めた。その間、吟遊詩人たちは木の下から彼を見上げ、笑っていた。 「この後はどうする気だい? 泥棒さん」そう言いながら笑っていたのは赤髪の美しい女で、体中にタトゥーを入れていた。「あたしたちに捕まってお仕置きされないように、どうやってここから出て行くのかしら?」 空腹が満たされてくると、エスラフは彼女の言うことももっともだと思った。彼らの輪の中に落ちることなくここから逃げる唯一の方法は、小川の方へと伸びる枝を伝って下りていくしかなかった。一歩間違えば50フィートほどの崖の下へと落ちてしまう。しかし、この方法が一番賢い策だと考え、エスラフはゆっくり枝の方へと這っていった。 「安全な落ち方は知ってるのか?」カジートの若者が叫んだ。エスラフよりやや年上のようで、華奢な体つきであったが筋肉はついており、ちょっとした動きにも優雅さが感じられた。「そんなことはやめて、こっちへ下りて来い。首を折っちまうような馬鹿な真似はやめろよ。それよりもお前を何発か殴ったら、家まで送り届けてやるよ」 「もちろん、落ち方ぐらい知ってるさ」エスラフは返事をしたが、彼らのほうへは戻らなかった。もちろん落ち方のコツなんてものは知らず、あとは成り行きに任せるしかないと思った。だが、50フィートもの高さから下を見下ろせば、誰もが動けなくなるだろう。 「大盗賊さんよ、あんたを見くびって悪かった」カジートはニッコリ笑いながら言った。「知ってると思うが、足から真っ直ぐ落ちると、卵みたいに割れちゃうぜ。まあ、それでも俺たちの手から逃げられることにはなるがな」 エスラフはカジートのヒントを受け、川へと飛び込んだ。優雅に、とは言えないまでも彼は無傷であった。年月が過ぎ、彼はこれよりも高い場所から飛び降りる場面に何度か出くわした、もちろん大体は盗みを働いた後にということだ。時には下に水がないときもあったが、彼は基本的な技を学んでいった。 エスラフは21歳の誕生日の朝、ジャレンハイムの町を訪れた。誰がこの町で一番の金持ちで、泥棒に入るのに絶好の相手か、すぐにわかった。この町の中心に難攻不落の宮殿がそびえたっており、その持ち主はスオイバッドという、神秘的な雰囲気の若い男だった。エスラフはすぐに宮殿を見つけ、観察した。これまでの彼の経験からいうと、このような要塞化された宮殿に住む人間には、頑丈な警備で固められた地下に物を隠すおかしな癖がある。 その宮殿は新しく、そのあたりから察するに、スオイバッドが金を手に入れたのもつい最近のことであろう。衛兵が定期的に見回りをしていることから、盗みに入られるのを恐れているようだ。この宮殿で特徴的といえるのが、石壁よりも100フィートも高くそびえる塔だった。このスオイバッドという男がエスラフが考えるような偏執症であれば、その塔から宮殿内の宝庫の場所が分かるだろう。金持ちというのは自分の財産をいつでも目にすることができるようにするものだ。つまり、この塔の真下に金目のものがあるのではなく、城内の中庭のどこかにあるのだ。 塔の照明灯は一晩中点けられていたので、エスラフは大胆にも真昼の時間帯に狙おうとした。おそらくスオイバッドも寝ているに違いないと考えた。衛兵もよもやそんな時間帯を狙って泥棒が入ってくるとは思っていないだろう。 そういうわけで、真昼の太陽が宮殿を照らすころ、エスラフは正門近くの壁をよじ登り、胸壁の裏に隠れて待った。中庭は平坦で荒涼としており、隠れる場所はほとんどなかったが、2つの井戸が見えた。1つは衛兵たちが時折水をくみ、喉の渇きを癒していた。しかし、もう1つのほうにはまったく衛兵が立ち寄らないことに気づいた。 宮殿に金品を運びこむ商人の馬車が通り、衛兵たちの気がそれる短いチャンスが訪れるまで待った。皆の注意が馬車に向いてるのを確認し、エスラフは壁から井戸の方へ足元から優雅に飛びこんだ。 軟着陸とは行かなかった。というのも井戸にはエスラフがにらんだとおり水ではなく、財宝で埋め尽くされていたからだ。それでも、彼は落ちたあとの受け身の取り方も学んでいたので、傷1つなかった。じめじめした地下の宝庫であったが、ポケットに詰めれるだけ詰め、まさにその場を立ち去ろうとしたその時、塔へと続くらしいドアのところにリンゴほどの大きさの宝石を見つけた。ここにある中で一番高価なものだと思ったエスラフは、パンツを広げそこへねじこんだ。 ドアは塔へと続いており、エスラフは静かに、すばやく階段の吹き抜けを上っていった。頂上へ到着すると、この宮殿の主の私室へと辿り着いた。そこは豪勢な装飾が施され、大変貴重な美術作品やら、飾りつきの剣や盾が壁に飾られていた。エスラフは、おそらくシーツの下でいびきをかいてるのがスオイバッドだと思った。彼はそれ以上は調べようとせず、窓へ這って進み、鍵を外した。 この高さからのジャンプは危険だろう。塔から壁を通り越し、反対側の木の枝まで飛ばなければいけなかった。木の枝で怪我をしてしまうかもしれないが、その下には怪我を防げそうな干草の山があった。 エスラフがその部屋から飛び出そうとしたその瞬間、部屋の主が目覚めて「私の宝石!」と叫んだ。 エスラフは目を大きく見開いて部屋の主としばし見つめ合った。彼らは瓜二つだった。驚くべきことではない、彼らは兄弟であったのだ。 この話は「戦士」の巻へと続く。 物語(歴史小説) 茶2
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/148.html
帝都の略歴 第1巻 帝都歴史家 ストロナッハ・コージュ三世 著 初代皇帝タイバー・セプティムによる統治以前、タムリエルは混沌に包まれていた。詩人トラシジスはこの時代を「絶え間ない血と憎悪にまみれた昼と夜」と書いている。各地の王たちはどれも貪欲な暴君で、地上に秩序をもたらそうとするセプティムに武力をもって抵抗した。 しかし、彼らはみな自堕落で統率がとれていなかったため、セプティムの力によって駆逐され、タムリエルに平和がもたらされた。第二紀896年のことであった。次の年に皇帝は新しい時代の始まりを宣言し、第三紀の幕が開けた。 皇帝タイバーは、38年間に渡り最高権力者として君臨した。その統治は正当かつ神聖で、この輝かしい時代では奴隷から支配者まで全ての人間が正義の恩恵を享受できた。皇帝の崩御の際には雨が2週間も降り続き、まるでタムリエルそのものが悲しみの涙を流しているかのようであった。 皇帝タイバーの後は、孫であるペラギウスが帝位を継いだ。彼の治世は短いものであったが、前皇帝と比べても遜色のない確固たる統治により、帝都の黄金時代は続いた。しかし、なんということか、皇帝家に敵対する何者かがあの呪われた殺し屋集団「闇の一党」に依頼し、帝都の最高神の神殿でひざまずき祈りを捧げる皇帝を襲わせたのである。ペラギウス一世の治世は3年にも満たなかった。 ペラギウスの崩御当時、彼に子供はいなかったので、帝位は彼のいとこでタイバーの弟アグノリスの娘へと渡ることになった。その娘、シルヴェナール女王キンタイラは、女皇キンタイラ一世として即位した。彼女の統治中、帝都は繁栄と豊作に恵まれ、また彼女自身は美術、音楽、舞踊を積極的に保護し発展させた。 そしてキンタイラ亡き後は、その息子が帝位を継いだ。タムリエル皇帝で始めてユリエルという皇帝名を使ったのが彼である。ユリエル一世は歴代皇帝の中でも随一の優れた立法者であり、私有の会社やギルドの設立を推奨した。彼の保護と規律のもと、戦士ギルドと魔術師ギルドがタムリエル中で活性化した。第三紀64年のユリエル一世の崩御後は息子のユリエル二世が、第三紀82年のペラギウス二世の帝位継承までの18年間帝位に就いた。悲劇的にも、ユリエル二世の治世中、帝都は都市の荒廃、疫病、暴動に悩まされることとなった。残念なことに、ユリエル二世が父から受け継いだ慈悲の心はタムリエルに行き渡らず、正義は果たされなかった。 ペラギウス二世はその父から帝位とともに負の遺産、つまり財政の困窮と法治の衰退を受け継がなければならなかった。ペラギウスは元老院を解散し、元老院の地位のために大金を払う者だけを残して残りの者を追放した。また、臣下であるタムリエル各地の王にもそうすることを推奨し、その甲斐あって、彼の17年間の治世が終わる頃にはタムリエルは再び繁栄した。ただし、この政策によって、英知がありながら金を払えなかった者が指導的立場から追われることになったとする批判もある。このことは、ペラギウスの後帝位を継いだアンティオカスの代に起こった諸問題の遠因となった。 質実な気風のセプティム家の中で、アンティオカスは珍しく派手な性格であった。彼は多くの妻と同じくらいの数の愛人を持ち、贅沢で派手な装いと快活な人格で知られた。しかし不運にも、彼の治世は祖父のユリエル二世の代よりも市民戦争の多い時代であった。第三紀110年のアイル戦争では、サマーセット島のほぼ全域がタムリエルから失われることになった。サマーセットの諸王と皇帝の連合軍は暴風雨のために苦戦し、ピアンドニアのオルグハム王を討ち負かすにとどまった。伝説によれば、アルテウム島のサイジック団が魔術をもってこの大嵐を起こしたとされる。 アンティオカスの後に帝位を継いだ娘のキンタイラ二世は、歴代で最も悲劇的な皇帝であろう。彼女のいとこでソリチュード女王ポテマの息子ユリエルが、アンティオカス統治下の帝都の退廃を仄めかしながら、キンタイラを私生児であると告発したのである。この告発でキンタイラの戴冠を止めることはできなかったが、ユリエルはその後も帝政に不満を持つハイ・ロック、スカイリム、モロウウィンドの諸王とポテマ女王を味方につけ、皇帝に対し3回の反乱を起こした。 一度目の反乱は、ハイ・ロックとハンマーフェルを隔てるイリアック湾周辺地域で起こった。この戦いでキンタイラの側近は殺され、彼女自身は捕われた。それから2年間、キンタイラはグレンポイントもしくはグレンモイルにあったとされる帝都獄舎に捕らわれた後、独房で謎の死を遂げた。 二度目の反乱はモロウウィンド諸島沿岸の守備隊に対する攻撃であった。キンタイラの夫コンティン・アリンクスは、この時砦を守る戦いの中で命を落とした。三度目の、そして最後の攻撃は帝都の占領であった。その直前、ハイ・ロックおよび東モロウウィンド攻撃のために元老院が帝都軍を分割しており、帝都の防衛力は落ちていた。そのため、ユリエルの圧倒的な戦力による侵略に抗することができず、わずか2週間後に帝都は陥落した。 ユリエルは帝都陥落の夜に自ら戴冠し、タムリエル皇帝ウリエル三世として即死した。第三紀121年のことであった。ここに端を発するレッド・ダイヤモンド戦争については、次巻で述べる。 歴史・伝記 緑3
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/62.html
幾人もの調査人が盗賊ギルドという難問を解いてみせようとした。組織としての盗賊ギルドは存在しないといくら証明されようとも、うわさ話が立ち消えになることはない。この謎の組織が実在する証拠を掴もうとする歴史家はいたが、何ひとつとして発見されず、目撃者は何も知らないと言い、隠れ家はもぬけの殻であった。故買人はただの業者だった。 ひとつはっきりさせておこう。盗賊は実在する。彼らはタムリエル各地の地下牢に投獄されているし、何人かの盗賊が徒党を組んで犯罪を行っていることも間違いない。まれにだが、窃盗その他の行為を何年も続けていたしぶとい盗賊団の存在が立証されたこともある。 しかし、ギルドはただの集まりではなく、会員名簿があるような組織であるとされている。財務構成がしっかりしていて、登録料やその他の資金確保の手段が確立されている。会員規約だってある。ギルドとはリーダーを頂点とする階層的組織で、組織内には昇級や継承の決まりも定められている。 立証されている盗賊ギルドでも最大のものはモロウウィンドにあった。わずかな期間ではあったが、郷神ジム・ステイシーが盗賊の組織を運営し、この島国で暮らす裕福な商人や貴族の家に盗みに入らせていたのだ。最近のネヴァリンの事件で、戦士ギルドと謎の人物、モラグ・トングがこのごろつきどもを一掃した。ジム・ステイシーの末路については定かではない。 モロウウィンドの盗賊ギルドはしっかりした財務構造を持つ、リーダーを軸とする組織であった。そういう意味では真のギルドにふさわしい条件を満たしていたが、短命であった。ステイシーの盗賊団が世間を騒がせたのはわずか数年でしかない。戦士ギルドが彼らを壊滅に追いやったと称される一方、ある歴史家は、ステイシーの盗賊団は地下組織化したにすぎないのではないかと見ている。 盗賊ギルドが存在しないと断定するには、きわめて論理的な問題がつきまとう。反対意見を証明することができないのだ。歴史家がその存在を記録に残してこなかったというだけでは、盗賊ギルドが実在しないと証明するのはとうていかなわないのである。 盗賊ギルドがシロディールで活動しているならば、犯罪がはびこっていてもよさそうなものだが、そういうことはない。盗賊とは、本質的に、長いあいだお互いを信用して仕事を続けることができない人種なのだ。生まれついての違法者なのである。そのため、盗賊のみで構成された法にもとづく組織は崩壊する運命にある。こうした理由から、現代の盗賊ギルドがシロディールで暗躍しているという主張には異議を唱えたい。 盗賊ギルド関連 社会 赤3
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/78.html
鎧の手引き この手引書は帝都の将校を対象とした、ウォーハフト将軍の監修による防具についての解説書である。 戦場では、兵士の防具は主たる任務に適したものでなければならない。斥候兵、軽騎兵、射手、尖兵には軽めの防具を身につけさせ、機動性とスピードを損なわせないことが肝要である。キュイラスとグリーヴは彼らの基本とも言うべき装備である。兜、篭手、ブーツは騎兵や尖兵には役立つが、斥候や射手には向いていない。 軽装は毛皮、革、鎖帷子、ミスリル、エルフ、碧水晶などから作られる。毛皮がもっとも安価で耐久性がなく、前述の順に質と値段が高くなっていき、碧水晶がもっとも高価で頑丈である。毛皮や革製の防具、鎖帷子は帝都のどこでもすぐに入手できる。ミスリル、エルフ、碧水晶はきわめて珍しい素材のため、古代の遺跡や僻地の墓所でしか見つからない。 重装は前線の歩兵、槍兵、重騎兵、歩兵騎士のための鎧である。将校に支給される鎧はすべて重装と決められている。どんなときも、兜、キュイラス、グリーヴは標準で装備しておくべきだろう。ブーツと篭手は騎兵や騎士のみが装備すべき防具である。 鍛冶屋は鉄、鋼鉄、ドワーフ、オーク、黒檀、デイドラから重装を鍛造することができる。鉄がもっとも安価で耐久力が弱く、前述の順に質と値段が高くなっていき、デイドラがもっとも高価で頑丈である。鉄や鋼鉄の胸当てはたいていの鍛冶屋で手に入る。その他の素材はとても珍しく、完成した防具となると地下深くに埋もれている古代の宝物庫でしか見つからない。 魔術師ギルドの熟練者なら、魔法で防具を強化する神秘を心得ている。黒檀やデイドラといった希少性の高い丈夫な素材から作られた防具には強力無比な魔法がかけられていることがままあるが、鉄製の防具でも魔法で強化することは可能である。 自称「戦う吟遊詩人」、アモラウス・ジャナスかつてコロヴィアの将軍についての風刺的なバラードを書き上げた。この将軍は数分ごとに装備を脱いでは着なおし、マジカの消費を節約しようとしていたのである。この遠まわしな批判に報いるため、将軍はファロー城の戦いではアモラウスを破城槌にくくりつけて戦ったということだ。 兵法・戦術 緑2
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/272.html
ベロのスピーチへの反応 魔闘士マルヴィサー 著 収穫の月14日、ベレヴァー・ベロという名の幻惑士が、帝都にあるジュリアノスの礼拝堂にて、非常に無知なスピーチを行なった。類稀なる無知なスピーチであったため、反応する理由がなかった。残念ながら、彼はその後スピーチの内容を『魔闘士へのベロのスピーチ』として自主的に出版し、少しばかりの受けるに値しない注目を学会から浴びた。ともに彼の誤認を解消しよう。 ベロは講演を、タイバー・セプティムの帝都魔闘士、ズーリン・アルクタスから、ユリエル・セプティム七世の帝都魔闘士、ジャガル・サルンまでの有名な魔闘士の一般的に事実とされている記録を述べるところから始めた。彼の狙いは、重要な場面で魔闘士は、その強みとされている破壊学よりも、違うマジカに頼るということを知らしめたかったのである。まず、この歴史の事実について異議を唱えさせてもらう。 ズーリン・アルクタスはベロが主張するように、神秘論や召喚の呪文を使ってヌミディウムというゴーレムを作り出していない。実際のところ、ヌミディウムがどのように作られたか、またはそれがゴーレムや精霊のような言葉がもつ伝統的な意味あいのものであったのか、我々は知らない。ユリエル5世の魔闘士ヘソスは帝都魔闘士ではなかった── 彼は単に帝都に雇われた妖術師であったので、彼がアカヴィルとの様々な戦闘でどのような呪文を唱えたかは無関係であり、それらが聞き伝えであることは言うに及ばない。ベロは女帝モリハーサの魔闘士ウェロックのことを「洗練された外交家」と呼ぶが、「破壊学の強力な研究者」とは呼ばない。帝都魔闘士を正しく識別できたことに関してはベロに祝いの言葉を送るが、破壊学に関するウェロックの技術の例は多くの書面に残されている。例を挙げると、賢者セララスは、ウェロックが吸血の雲をブラックローズの反乱軍に対して唱え、彼らの腕力と技術を味方に移したことを長く書き綴っている。これは何であるか? 破壊学の素晴らしい実例以外の何ものでもない。 ベロは哀れにも、ジャガル・サルンを実力の低い魔闘士として挙げている。気の触れた裏切り者を理性的行動の例に使うのは受けいれ難い見解である。ベロは何を希望しているのか? サーンに破壊学を用い、タムリエルを従来の手段で破壊して欲しかったのであろうか? ベロは彼の虚偽の歴史を論拠としている。もし彼が歴史の中から、魔闘士が破壊学以外の呪文を唱えている、4つの好例を探し出したとしても── 実際、見つけられていないが── それは逸話的な証拠であり、論理を支えるには至らない。私は、治癒の呪文を唱える幻惑士や瞬間移動する処刑人などの例を4つ楽に探し出せる。すべてに適切な時と場所が存在するのである。 この不安定な土台にたっているベロの論理は、破壊学は真の学問ではないというところである。彼は破壊学を学問の道としては「狭くて浅い」と呼び、その生徒たちは性急で、誇大妄想の傾向があると言う。これにはどのように反応すればよいのか? 破壊の呪文を一切しらないものが、その学問を単純すぎると酷評する? 破壊学は「最大のダメージを最小の時間で与える」ことを学ぶとして要約するのは明らかに馬鹿げている上に、幻惑学で研究した複雑な要因を列挙することによって、己の無知加減をさらに詳しく露呈している。 破壊学にて学ぶ要因を挙げることで反論させてもらう。破壊学では呪文を到達させる方法が他のどの学問よりも重要である。接触によって呪文をかけるのか、距離をおいて、集中的な円の中で、または1度かけて後に発動させるのかなどである。炎、雷、冷気などの呪文をかけるには、どのような力を加えなければならないのか? それぞれの利点や危険性は? 違った種類の破壊の呪文攻撃に対する様々な標的からの反応は? 可能な防御や、いくつの標的に対して攻撃できるのか? どのような環境要因が考慮されなければならないのか? 遅延ダメージを与える呪文の利点は? ベロは破壊学は繊細になり得ないと示唆するが、時には世代に次ぐ次世代にまで影響を繊細かつ崇高に及ぼし、この学問の範囲に収まる「呪い」の数々のことを彼は忘れている。 変性学は、破壊学とは区別された個別の存在であるが、その2つは併合されるべきと主張するベロの論理は明らかに滑稽である。彼はこう断言する── またもや、変性学や破壊学について何もしらない男が言うのである── 「ダメージ」は変性の呪文によって与えられる、現実の変化の一部である。意味合いとしては、変性の呪文を挙げると、空中浮遊、それは破壊の呪文である電撃と非常に近い存在であると。それを言うのであれば、変化の現実を学ぶ変性学が、変化の表現を学ぶ幻惑学を吸収したほうがよいと言うのも同等に理にかなっている。 幻惑学のマスターが破壊学にこの攻撃を仕掛けたのは決して偶然ではない。結局のところ、幻惑とは真実を覆い隠すことなのである。 緑3 魔法学・薬学
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/229.html
狙いどころ指南書 ドゥーマー太古の物語 第3部 マロバー・サル 著 オスロバーの族長は、彼の賢者たちを集めこう言った。「毎朝、家畜が死んでいる。何が原因なのだ?」 ファングビス戦闘隊長は言った。「モンスターが山から下りてきて、家畜を食べているのかもしれません」 治癒師ゴーリックは言った。「新種の疫病が原因かもしれませんな」 ベラン司祭は言った。「女神に助けていただくには、生けにえを捧げる必要がある」 賢者たちは生けにえを捧げ、彼らが女神からの答えを待つ間、ファングビスは師匠ジョルタレグの下へ行きこう言った。「ゾリアの棍棒の鍛造や、それを戦闘でどのように使うのかを実によく教えていただきましたが、今は自分の技能をいつ使えばよいのかを知る必要があります。女神からの回答があるまで、または薬が効くまで待つのでしょうか。それとも山にいると分かっているモンスターを退治に行くのでしょうか? 」 「『いつ』は重要ではない」と、ジョルタレグは言った。「『どこ』なのかが重要だ」 ファングビスはゾリアの棍棒を手に持ち、暗い森の中を遠く、偉大な山のふもとまで歩いた。そこで彼は2匹のモンスターに出会った。オスロバーの族長の家畜の血でぬれていた片方は、連れが逃げるあいだ彼と戦った。ファングビスは「どこ」が重要であると言った師匠の言葉を思い出した。 彼はモンスターの急所5ヶ所を殴った。頭、股間、喉、背中、胸。五ヶ所を5回ずつ殴り、モンスターは倒された。そのモンスターは運ぶには重すぎたが、それでも意気揚々としてファングビスはオスロバーへ戻った。 「おーい、家畜を食べたモンスターを殺しました」と、彼は叫んだ。 「モンスターを殺したという証拠はどこにあるのだ?」と、族長は聞いた。 「おーい、私の薬が家畜を救いましたぞ」と、治癒師ゴーリックは言った。 「おーい、我が生けにえによって女神が家畜を救ったのだ」と、ベラン司祭が言った。 朝が2回すぎたが家畜は無事であった、しかし、3日目の朝、また族長の家畜が10匹殺されていた。治癒師ゴーリックは彼の書斎へ新しい薬を探しに行った。ベラン司祭はさらなる生けにえの準備を行なった。ファングビスはゾリアの棍棒を手に、またしても暗い森の中を遠く偉大な山のふもとまで歩いた。そこで、オスロバーの族長の家畜の血でぬれた、もう一方のモンスターに出会った。彼らは戦い、またしても、「どこ」が重要であると言った師匠の言葉を思い出した。 彼がモンスターの頭を5回殴ると、モンスターは逃げた。山沿いに追いかけ、彼が股間を5回殴ると、モンスターは逃げた。森の中を走りながら、ファングビスはモンスターを追い越し、喉を5回殴ると、モンスターは逃げた。オスロバーの田畑に入り、ファングビスはモンスターを追い越し、背中を5回殴ると、モンスターは逃げた。砦の下ではモンスターが嘆く音を聞き、族長や賢者たちが顔を覗かせた。彼らはそこから族長の家畜を殺したモンスターを見守った。ファングビスがモンスターの胸を5回殴ると、モンスターは死んだ。 ファングビスの名誉を称えて大きな祝宴が開かれ、その後2度とオスロバーの家畜が殺されることはなかった。ジョルタレグは彼の弟子を抱きしめ、こう言った。「やっと“どこ”で敵を殴ればよいのかを覚えたようだな」 出版社注: この物語もまた、ヴァーデンフェル島のアッシュランダー族に明らかな起源を持つ物語であり、彼らの最古の物語の1つである。「マロバー・サル」は単に登場人物の名前を「ドワーフ」らしい名前に変え、彼の書籍として再販売したのである。物語に登場する偉大な山は、森に覆われているとの記述をよそに、明らかに「赤き山」である。流星や後の大噴火が赤き山の植物を破壊し、今日の荒廃した外観を与えた。 原始的なアッシュランダーの文化を示唆するこの物語は学術的な興味を引くが、物語の中には今日のヴァーデンフェル島に存在する、遺跡のような「砦」での生活のことを話している。ヴァーデンフェル島とスカイリムの間の「オスロバー」砦についてさえも言及しているが、まばらに定住者が住むヴァーデンフェル島外の砦のうち、今日まで現存するものは少数である。学者たちは誰がいつこれらの砦を造ったのかについて合意しないが、太古のアッシュランダー族は今日のように麦わら小屋の野営地を設置するのではなく、これらの砦を使用していたことが、この物語や他の証拠からも明白である。 言葉遊びが寓話の教訓を形成する── どこでモンスターを殺すべきか(砦の下)はモンスターのどこを殴って殺すかと同等に重要である── これは多くのアッシュランダー物語の典型である。この物語のような簡単ななぞ掛けであっても、アッシュランダーや滅んだドゥーマーたちには好まれていた。ドゥーマーは通常なぞ掛けを出題する側として表現されるが、アッシュランダーの物語のように解く側ではない。 小説・物語 緑3
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/126.html
2920 南中の月(7巻) 第一紀 最後の年 カルロヴァック・タウンウェイ 著 2920年 南中の月4日 帝都 (シロディール) 皇帝レマン三世と支配者ヴェルシデュ・シャイエは、2人並んで宮殿の庭園をぶらついていた。彫像や噴水で飾られた、北の方の庭園が皇帝の今の気分に合っていた。何より夏の暑さを避けるのに好都合であった。よく手入れされた、青灰色と緑色に染まった花壇が、歩いて行く彼らの周りに階段状に広がっていた。 「ヴィヴェックは王子の和平の申し出を受け入れたようだな」と皇帝は言った。「息子は2週間もすれば帰ってくるそうだ」 「素晴らしい知らせですね」ヴェルシデュ・シャイエは注意深く答えた。「ダンマーが約束を守ってくれればいいのですが。ブラックゲート要塞の件もありますし、それに関しては、私達も強く出るべきでしょう。しかし、王子は妥当な方法を採られたと思います。決して、平和のためだけに帝都を陥れるようなことはなさらないでしょう」 「このところ私が考えていることは、なぜリッジャが私を裏切ったかということだ」と言って皇帝は立ち止まると、奴隷女王アレッシアの像を崇め、言葉を続けた。「一つだけ考えられる理由は、彼女が王子の方になびいていたのかもしれない、ということだ。確かに私の権力や人柄には惚れ込んでいたのだろうが、しかし王子は若い、そして美しい。それに、ゆくゆくは皇位を継ぐことになる。もし私を暗殺してしまえば、彼女は若さと権力の両方をそなえた皇帝を手に入れられるのだから」 「王子が? 彼がこの謀略に関係していると?」ヴェルシデュ・シャイエは尋ねた。皇帝の被害妄想の矛先はどこに向かうのか予想できなかった。 「いや、もちろん本気でそうだとは思っていない」と皇帝は笑って言った。「王子は私のことをとても愛してくれている」 「コルダのことはご存知ですか? リッジャ様の妹で、ヒゲースにあるモルワ修道院の生徒なのですが」とシャイエは聞いた。 「モルワ? そこは何の神だったかな?」と皇帝が聞いた。 「官能と豊穣を司る、ヨクーダの女神ですよ」とヴェルシデュ・シャイエは答えた。「もっとも、ディベラほどの好色でありませんが。つまり、上品な官能なんです」 「私は官能的な女性にはうんざりだ。リッジャ女帝は欲望が過ぎる。強すぎる愛への切望は、強い権力への切望に通じているものだ」と皇帝は肩をすくめた。「しかし、ある程度の健康的な欲求を持った司祭見習いなら、理想的というもの。ところで、ブラックゲート要塞の件についてはどう思う?」 2920年 南中の月6日 サーゾ要塞 (シロディール) 皇帝がリッジャに話しかけたとき、彼女は冷たい石床にじっと目を落としていた。これほどまでに青白くやつれた姿を、彼は見たことがなかった。少なくとも、自由の身になって故郷に戻れることを彼女は喜んでいるのかも知れない。何故なら、彼女が帰る頃には、ハンマーフェルでは「商人の祝典」が開かれているからだ。だが、彼の見たところ、彼女は何の反応も示さなかった。このサーゾ要塞での1ヶ月半が、彼女の心をすっかり壊してしまったのだ。 「私はこう考えている」ととうとう皇帝は切り出した。「お前の妹のコルダを、しばらく宮殿に置こうと思う。きっと、ヒゲースの修道院よりは気に入ってくれると思うんだが。そう思わないかい?」 彼女は反応した。キッと彼の方を見据えると、獣のような怒気を投げつけたのだ。そして、長年の監禁で伸び放題になっていた爪を、彼の顔面、目に向かって振り下ろした。彼が痛みに声をあげると、衛兵がすぐに駆けつけ、彼女を剣の峰でもって気絶するまで激しく殴った。 すぐに治癒師が呼ばれたが、皇帝レマン三世は右眼を失った。 2920年 南中の月23日 バルモラ (モロウウィンド) 水から出ると、ヴィヴェックは肌に照りつける太陽の熱を感じた。そして、召使いからタオルを受け取った。ソーサ・シルがこの古い友人の様子をバルコニーから見ていた。 「傷跡がまた増えたようだね」とその妖術師は言った。 「アズラの話では、しばらくはこれ以上増えることはないはずだがね」とヴィヴェックは笑った。「いつこっちへ?」 「1時間くらい前だ」とソーサ・シルは言って、階段を降り、彼のそばに近寄った。「戦争は終わりに近付いているようだな。しかも、私の手を借りず、君の手によって」 「まあ、いくら終わらないとはいえ、80年は長すぎる」ヴィヴェックはそう返すと、ソーサ・シルと抱き合った。「こちらも譲歩したし、あちらも譲歩した。今の皇帝が死ねば、私達は黄金期に入るだろうね。ジュイレック王子は、年の割に聡明な青年だ。ところで、アルマレクシアはどこだ?」 「モーンホールドへ公爵を呼びに行っている。明日の昼には、2人ともここへ到着するだろう」 彼らは、ふと邸宅の角の方を見やった。2人に向かって、馬に乗った女が近付いて来ていた。長い道のりを走破して来たのは明白である。書斎に招じ入れられると、息を切らして話始めた。 「裏切られた」と女があえぐように言った。「ブラックゲートが帝都軍によって奪取されたわ」 2920年 南中の月24日 バルモラ (モロウウィンド) ソーサ・シルがアルテウム島に行った後で、モロウウィンドの法廷のメンバー3人が1同に会するのは、実に17年振りであった。しかし、このような形での再会は、3人の誰も願ってはいなかった。 「我々の情報によれば、王子の指揮する帝都軍が南方のシロディールへと立ち去るのと入れ代わりに、別の帝都軍が北方から迫って来たようだ」と、石のように固まった表情の仲間に向かって、ヴィヴェックが言った。「もちろん、王子がこの攻撃を知らなかったという可能性もある」 「だが、その逆も考えられる」とソーサ・シルが答えた。「王子が気を引いている間に、皇帝がブラックゲートを討つ。いずれにせよ、これは講和協定の破棄と見るべきだな」 「モーンホールド公爵はどこに?」とヴィヴェックが尋ねた。「彼の意見も聞きたい」 「テル・アルーンの夜母と会っているところよ」とアルマレクシアが静かに答えた。「あなたと話すまで待つよう言ったんだけど、でも、『この問題については、もう待てない』と」 「モラグ・トングを巻き込むつもりなのか? 国の問題だぞ?」と言ってヴェヴェックは首を振ると、ソーサ・シルに言った。「全力を尽くして欲しい。暗殺は事態を逆戻りさせるだけだ。この問題には、外交もしくは戦闘しかない」 2920年 南中の月25日 テル・アルーン (モロウウィンド) 大広間の夜母とソーサ・シルを、月の光だけが照らしている。彼女はこの上なく美しいドレスの上に簡素な絹の黒ローブを羽織って、長椅子にもたれかかっていた。夜母は赤マントの衛兵達を退室させると、彼にワインを勧めた。 「ちょうど公爵と入れ違いね」と彼女は囁いた。「彼、悲しんでいたわ。でも、私達がしっかり解決してみせます」 「公爵は、皇帝を殺すモラグ・トングの暗殺者を雇ったんだろう?」とソーサ・シルが尋ねた。 「はっきり言うわね。いいわ、そういう人、好きよ。時は金なりね。もちろん、私と公爵との話をあなたに教える訳にはいかないけど」と彼女はにっこり笑った。「商売上の守秘義務だから」 「もしも、皇帝の暗殺を止めさせるのに、同じだけの金を出すとしたらどうする?」 「私達モラグ・トングは、メファーラの栄光と利益のために動いているの」と夜母は言ってグラスを傾けた。「これは単なる殺しじゃない。そんなのは冒涜に過ぎない。三日以内に公爵から金が入れば、仕事にとりかかって、終わらせる。でもその逆の仕事をするなんてあり得ないこと。確かに、私達は利益を求めて動くけれど、単なる需要と供給に屈するわけにはいかないのよ、ソーサ・シル」 2920年 南中の月27日 内海 (モロウウィンド) ここ2日間ずっと内海を眺めていたソーサ・シルは、ついに目当ての船がやってくるのを見つけた。モーン・ホールドの旗を掲げた重装船である。妖術師ソーサ・シルは先手を取って、船が港へ着くのを妨害した。炎の帯が彼の体から噴き出し、声が変わり、炎はデイドラの形に変化した。 「その船を捨て去れ!」と彼は大声で唸った。「さもなくば、船もろとも沈めてやろう!」 実際に放った火の球は一つだけだったが、彼の思惑通り、乗組員達は暖かい海へと飛び込んで行った。全員が飛び込んだのを見計らって、彼は強烈なエネルギーを破壊的な波動に込めた。その波動は、空気と海水を震わせながら、公爵の船をことごとく粉砕し、船はモラグ・トングの報酬になるはずだった公爵の金と共に、内海の深くへと沈んでいった。 「夜母よ」と、沿岸警備員に救助が必要な船乗りがいることを知らせるために岸に向かって泳いでいる間、ソーサ・シルは考えていた。「需要と供給には誰もが従わねばならないのだ」 時は、収穫の月へと続く。 物語(歴史小説) 紫1
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/89.html
子供向けのアヌの伝記 最初のものたちはアヌとパドメイの兄弟でした。彼らが「虚無」にやってきて「時」が始まったのです。 アヌとパドメイが「虚無」をぶらついていると、光と闇がまざりあってニーアが生まれました。アヌもパドメイもニーアの出現に驚き、喜びましたが、彼女が愛したのはアヌでした。パドメイは傷心のまま行方をくらましました。 ニーアは身ごもりました。ところが、赤ちゃんを産む前にパドメイが戻ってきて、ニーアへの愛を打ち明けたのです。私が愛しているのはアヌだけなの。そう告げられたパドメイは怒りにまかせて彼女を打ちのめしました。アヌが帰ってくると、パドメイと戦い、“時”から追放しました。ニーアは「創造」を産み落としましたが、殴られたときの傷のせいで間もなく死んでしまいました。アヌはとても悲しみ、太陽の中に隠れて眠りにつきました。 そのあいだに、“創造”の十二界に生命が芽吹き、繁栄していきました。いくつもの時代が流れてから、パドメイは「時」に戻ることができました。「創造」に会うと、憎しみがわいてきました。彼は剣を抜き放すと、それぞれがつながっている十二界をずたずたに切り裂きました。アヌが目覚め、またもやパドメイと戦いました。長い、激しい戦いのすえ、アヌが勝利しました。パドメイは死んだものと思われました。アヌはパドメイを捨て置いて、十二界の破片をかき集めてひとつの世界── ニルン、つまり、タムリエル── にすることで“創造”を救おうとしました。そのときでした。パドメイの死にぎわの一撃がアヌの胸をつらぬいたのです。アヌはパドメイにしがみつくと、パドメイもろとも“時”の外へと身を投げました。 パドメイの血はデイドラとなり、アヌの血は星となりました。ふたつの血が混ざり合うと、エイドラが生まれました。(そのため、エイドラは善にも悪にもなれるのです。「創造」とのつながりがないデイドラよりも、エイドラのほうがこの世の出来事に深く関わっているのも頷けます) ニルンの世界は混沌に満ちていました。「創造」の十二界のゆいいつの生き残りが、エルノフェイとヒストでした。エルノフェイはエルフと人間の祖先で、ヒストはアルゴニアの樹木です。ニルンは内陸の海原をふくめたすべての大地ですが、大洋ではありません。 エルノフェイの世界の巨大なかけらは、それほど壊れることなくニルンに落ちました。エルノフェイの民はそのままそこで暮らし、エルフの祖先となったのです。エルノフェイの民は外界の混沌とをへだてる境界を強化し、彼らの静かな土地をこっそりと隠して、これまでと同じように暮らそうとしました。十二界が裂けたことによる大混乱のさなかには、他のエルノフェイの民もニルンにやってきて各地に散らばり、何年ものあいだ、仲間を見つけながらさまよい歩きました。最終的に、エルノフェイの流浪の民は、前時代のエルノフェイの民が暮らす秘密の土地をさがしあて、自分たちの類縁がいにしえの壮麗な暮らしをつづけていることに驚き、喜びました。流浪の民は、この安息の地で歓迎されると思っていましたが、エルノフェイのいにしえの民にとっては彼らは落ちぶれた下劣な民でしかありませんでした。くわしい理由はわかりませんが、戦争が起こり、ニルン全土へとその戦火が広がっていきました。いにしえの民が古代の神秘や知識を受け継いできていたとはいえ、流浪の民は数で勝っていたばかりか、長いあいだニルンで懸命に生き抜いてきたため、とてもたくましかったのです。この戦いはニルンの様相を一変させました。たくさんの土地が海に沈み、現在、わたしたちが知る土地(タムリエル、アクヴァル、アトモラ、ヨクーダ)だけがあとに残りました。いにしえの民の土地は、この争いで手ひどく荒らされたものの、後にタムリエルとなりました。生き残った流浪の民は、三つの大陸に散っていきました。 長いときをへて、タムリエルのエルノフェイの民は次のように分かれました。 ・マー(エルフ) ・ドワーマー(深きもの。ドワーフと呼ばれることも) ・チャイマー(変わりしもの。のちのダンマー) ・ダンマー(黒きもの、忌まわしきもの。ダークエルフ) ・ボズマー(緑の民、森の民。ウッドエルフ) ・アルトマー(古きもの、高きもの。ハイエルフ) 他の大陸では、エルノフェイの流浪の民が人間── アトモラのノルド、ヨクーダのレッドガード、アクバルのツァエシ── となりました。 ヒストの民はエルノフェイの戦をだまって見ていましたが、彼らの領地のほとんどは戦禍に巻き込まれて滅びました。難を逃れたわずかな土地はタムリエルのブラック・マーシュとなったものの、その大半は海のもくずと消えました。 やがて、人間がタムリエルに戻ってきました。まず最初に、伝説的人物、イスグラモルの率いるノルドが、先史時代にタムリエルの北岸に入植しました。歴史的文献にはじめて登場したノルドは、彼の家系の十三代目にあたるハラルド王です。この王の出現によって、神話の時代は終わりをつげたのです。 白1 神話・宗教